News新着情報

2022.8.25

包括的腎不全治療学講座について

わが国において透析療法を必要とする慢性腎不全患者は増加し続けており、2020年末で34万人を超えています。しかし、腹膜透析の普及率は3.0%と依然として低い状態が続いています。腹膜炎や被嚢性腹膜硬化症などの合併症の予防や治療が解決できていないことも理由のひとつですが、腹膜透析を実践していない施設があることや、そのような施設では腹膜透析に関する情報提供が十分なされていないこと、腹膜透析に関する医師や看護師の教育体制が整っていないことなども要因と考えられます。
腎代替療法において、血液透析と腹膜透析は互いに競合するものではなく、互いに補完すべきものと考えられます。腹膜透析では血液透析に比して残腎機能が温存されやすいこと、残腎機能が保たれていることは生命予後に有利であることが報告されており、腹膜透析の利点と考えられています。一方で、腹膜透析の透析効率は血液透析ほど良好ではなく、残腎機能が廃絶した場合、腹膜透析単独では十分な透析がなされないという欠点があります。そこで、残腎機能が比較的保たれている間は腹膜透析を行い、残腎機能が廃絶した時点で血液透析の併用、移行を行うという導入方式 (integrated care approach)が、生命予後にも良好である可能性が報告され、「PDファースト」の概念として受け入れられています。さらに、腎代替療法として腎移植まで総合的に捉えた、「包括的腎代替療法 (integrated renal replacement therapy)」を実践することが、患者さんのQOL、生命予後改善のために必要です。
当講座では、透析導入前の慢性腎不全患者さんに対して、看護師による専門外来を含めたチーム医療による療法選択を行い、適切な腎代替療法の選択を推進しています。また、腹膜透析を選択した患者さんに対して、質の高い腹膜透析医療を提供できるように取り組んでいます。
前のページに戻る