研究内容

臨床研究

慢性腎臓病(CKD)患者における骨格筋量推定に関する横断研究

はじめに

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを、一般に「臨床研究」といいます。その一環として、九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科では、現在、慢性腎臓病(CKD)の患者さんを対象に、骨格筋量の推定とサルコペニアに対する治療法の確立に関する「臨床研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和3年3月31日までです。

研究目的や意義について

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が慢性的に(3か月以上)障害される病態です。慢性腎臓病の原因は様々ですが、糖尿病、高血圧、肥満などの生活習慣病や腎臓に炎症が起きる糸球体腎炎を背景に発症します。慢性腎臓病が高度になると、体のだるさ、かゆみ、吐き気、むくみ、息苦しさ、貧血、不整脈などの様々な症状が現れます。
 慢性腎臓病は、様々な原因によって骨格筋(いわゆる手足の筋肉)の量が少なくなり、筋力が低下しやすいことが知られています。このように、疾患などが原因で病的に骨格筋量と筋力が低下する状態を”サルコペニア”と呼んでいます。サルコペニアを合併して骨格筋量が減少して筋力が低下すると、患者さんは転倒しやすくなります。またその結果、骨折する危険性が高くなります。さらに、サルコペニアを合併して骨格筋量が少ない患者さんは、脳卒中や虚血性心臓病などの心臓血管系の病気を発症しやすいことがわかっています。このため、各患者さんの骨格筋量を定期的に簡便に測定できれば、サルコペニアを合併した患者さんに対して必要な治療を行ったり、骨格筋量の減少を予防する対策を立てることができるようになると考えられます。
 骨格筋量を測定する方法には、様々な方法が考案されています。それぞれの検査には一長一短があります。例えば、最も正確な骨格筋量測定のための検査は、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)を用いた検査です。しかし、この検査は放射線を当てる検査であるため、放射線照射に伴う副作用が問題になります。一方、体に微弱な電流を流して骨格筋などの体組成を測定するバイオ電気インピーダンス(BIA)法という手法も最近は頻繁に用いられています。この方法は、有害性が低く、検査を受けることによるデメリットはほとんどありません。しかし、特殊な機械を必要とするため、機械のない施設では骨格筋量の測定ができません。
 そこで私たちは、腎・高血圧・脳血管内科に通院されている外来患者さんや過去に入院された患者さんの採血結果や身体指標(身長や体重など)を組み合わせて、BIA法を用いて測定した骨格筋量を推定する式を作成するための研究を今回計画いたしました。研究の概要は次ページの図(研究の概要)をご覧ください。骨格筋量を推定する式に用いる血液検査項目やその他の項目は日常診療で一般的に実施する採血に含まれる項目です。このため、これらの項目を用いて作成した推定式が完成すれば、特殊な機械を用いずに、患者さんの骨格筋量を日常外来診療で測定している採血結果などから推算し、診断や治療に有効利用できます。その結果、慢性腎臓病の患者さんの診療の質が向上し、患者さんがより健康で長生きできるようになることが期待されます。

研究の対象者について

過去に慢性腎臓病の治療あるいは検査のために九州大学病院の腎・高血圧・脳血管内科を外来受診された方あるいは同科に入院されたことがある方を対象にさせていただきます。研究に参加可能な条件および参加できない条件は以下の通りです。

適格基準:
(1)平成30年1月1日から令和2年3月31日までに九州大学病院の腎・高血圧・脳血管内科に入院あるいは外来通院した患者さん
(2)入院中に腎臓機能の指標である血清クレアチニン値と血清Cystatin C値を血液検査で測定した患者さん
(3)入院中のInBody®で筋肉量が体重の何%ほどに相当するのかなどを測定するための検査を受けた患者さん
(4)この研究計画について十分に理解し、本人による同意が可能な患者さん
(5)同意取得時における年齢が満20歳以上、80歳未満の患者さん

除外基準:
(1)研究者が研究参加者として適切でないと判断した患者さん
  例1) おなかに水がたまったり、足のむくみがひどい患者さん (筋肉量の測定が不正確になるため)
  例2) 病期などのために脚を切断していて筋肉量が非常に少ない患者さん
  例3) 肝硬変などのような基礎疾患があるために同年齢の健康な人より筋肉量が著しく低い患者さん

今回の研究に参加していただく患者さんの数は約100名を目標にしています。

研究の方法について

この研究への参加に同意いただきましたら、電子カルテから以下の情報を取得します。過去の採血検査の結果などを使わせていただきますので、今後研究のために採血などの検査を追加で受けていただくことはありません。取得する情報は以下の通りです。

 〔取得する情報〕
年齢、性別、身長、体重、慢性腎臓病の原疾患、糖尿病の有無、浮腫の有無、
胸腹水の有無、利尿薬使用の有無
血液検査結果
(血液ヘモグロビン、白血球数、血小板数、総蛋白、アルブミン、尿素窒素、
クレアチニン、シスタチンC、推定糸球体濾過量、総コレステロール、中性脂肪
ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、リン)
体組成測定検査(InBody®)の結果 (筋肉量、脂肪量、四肢骨格筋量)

この研究は、患者さんが診療上必要なために行った過去の採血や検査結果をもとにした臨床研究ですので、この研究に参加することで患者さんが被る身体的、経済的負担は皆無であると考えています。このため、本研究の適格条件を満たしかつ除外条件を満たさない患者さんを全員登録することを目標にしています。

研究の同意について

(1)現在も九大病院の腎・高血圧・脳血管内科へ通院中の患者さんがこの研究に参加していただく場合
この研究に参加していただけるかどうか、ご本人の意思を外来で伺い、ご同意いただける場合には書面での同意を頂き、研究に参加していただきます。

(2)現在当院の腎・高血圧・脳血管内科に外来通院されていない患者さんが研究に参加していただく場合
この研究へ参加していただけるかどうかについての患者さんのご意思について確認することが難しいため、ホームページ上でこの研究を掲示させていただき、研究に参加することを拒否されるとのご連絡を患者さんご自身から事務所に頂戴しない限り、この研究に参加することに同意をいただいたと判断させていただきます。ホームページでこの研究のことをご覧になって、この研究に参加することにご同意いただけない場合には、事務局までご連絡ください。ご連絡をいただいた患者さんはこの研究から除外させていただきます。

この研究への参加および不参加はあなたの自由な意思で決めてください。この研究への参加に同意されなくても、あなたの今後の診断や治療に不利益になることは全くありません。

 また、いったん同意した場合でも、あなたが不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができます。同意を撤回されたい方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

その場合は、研究用に取得した情報もそれ以降はこの研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時点で、すでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。

個人情報の取り扱いについて

研究対象者の血液検査の結果や電子カルテから得られる情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。

また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。

この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学の教授である北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。

ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、事務局までご連絡ください。研究対象者の血液検査の結果や電子カルテから得られる情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。

また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。

この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学の教授である北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。

ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、事務局までご連絡ください。

試料や情報の保管等について

この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学の教授である北園孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等をすべて消去し、廃棄します。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。

一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。

本研究に関する必要な経費は講座寄付金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制および相談窓口について

この研究は以下の体制で実施します。
 
研究実施場所(分野名等) 九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 北棟10階および内科外来
研究責任者 九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 教授 北園 孝成
研究分担者 九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 中野 敏昭
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 田中 茂
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 山田 俊輔
九州大学病院 腎疾患治療部      医員 冷牟田 浩人


この研究に関してご質問や相談等ある場合は、以下の事務局までご連絡ください。
また、このホームページをご覧になって本研究への参加を拒否される場合にも以下の事務局までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 中野 敏昭
    九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 山田 俊輔
連絡先:〔TEL〕092-642-5843(PHS 2662)
    〔FAX〕092-642-5846
メールアドレス:ana65641@nifty.com

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
  • 九州大学
  • 九州大学病院
  • 大学院医学研究院、大学院医学研究府、医学部