研究内容

臨床研究

腎移植における移植時及び腎生検時のベースラインと、ドナーおよびレシピエントの予後と 移植腎組織傷害の関連性の検討

はじめに

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院病態機能内科学及び臨床・腫瘍外科学では、現在腎移植後の患者さんを対象として、腎移植における移植時及び腎生検時のベースラインと、ドナーおよびレシピエントの予後と移植腎組織傷害の関連性の検討に関する「観察研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027年1月14日までです。

目的や意義

末期腎不全という病気は、腎機能がほぼ働かなくなり、廃絶しつつある状態です。原因は様々で、主な症状としては、尿毒症などが現れます。
末期腎不全の治療法としては、主に血液透析、腹膜透析、そして腎移植を行うのが一般的です。腎移植が成功した場合,患者は尿毒症状,食事制限,生活制限,長期の透析合併症から解放されます.免疫抑制剤などの治療法の進歩により,2000年代の移植腎生着率は10年間で80%を超えています.今後,短期成績のさらなる改善と,移植腎機能の長期生着率をいかに改善させるかということが求められています。
また、腎移植ドナーの方の安全性も求められています。現在、高血圧などの基礎疾患がコントロールされている場合、ドナーになることは可能ですが、その場合、どういった腎組織であるか、といった点は、今後も検討が必要な状況です。
そこで、今回、腎移植後の患者さんを対象として、腎移植における移植時及び腎生検時のベースラインと、ドナーおよびレシピエントの予後と移植腎組織傷害の関連性の検討を目的として、本研究を計画しました。本研究を行うことで、腎移植後のドナー及びレシピエントの予後が改善することを目標としています。

対象

九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科及び胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科に入院または通院された患者さんのうち、2000年1月1日から2021年12月31日までの間に腎移植手術を受けられ(ドナーの方、レシピエントの方を含みます)、通常診療の際に採血を必要とする方、800名を対象とさせていただく予定です。研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究内容

この研究への参加に同意いただきましたら、カルテより以下の情報を取得します。
 〔取得する情報〕
血液、尿、病理組織、胸写,CT,MRI,エコー,腎シンチグラフィー,ABI
・病理組織
組織診断名は診療録より抽出します。糸球体,間質,血管などの各々の病変については,既存のHE,PAS,PAM,Masson-Trichrome染色を用いて評価を行うが,必要に応じて,パラフィン
切片,凍結切片を用いた免疫染色を適宜追加します。
・血液検査
血算,一般生化学,薬剤血中濃度,ウイルス抗体の有無
・免疫学的検査
HLA検査,交差適合試験,フローサイトクロスマッチ,抗ドナー抗体
情報:性別,年齢,血液型,原疾患,既往歴,生活歴,身長,体重,血圧
・治療内容
免疫抑制薬,降圧薬などの内服薬,注射薬,輸血種類
・主要評価項目
腎機能の顕性増悪および末期腎不全への移行の有無とその時期
・副次的評価項目
1.転帰
2. 拒絶,感染症,心血管事故,悪性腫瘍などの合併症の有無とその時期
3. 各種画像診断による心拡張能障害,血管石灰化,動脈硬化
4. 術後の貧血
5. 副甲状腺機能
上記の病理組織所見と臨床データなどとの関係を、統計学的手法を用いて解析します。

個人情報、試料の管理について

あなたの血液や病理組織、測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、あなたのお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。あなたと研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学病院腎疾患治療部のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、あなたが特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 教授 北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

〔試料について〕
この研究において得られたあなたの血液や病理組織等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学において同分野 教授 北園孝成の責任の下、5年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。

〔情報について〕
この研究において得られたあなたのカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学において同分野 教授 北園孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
また、この研究で得られたあなたの試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、あなたの同意がいただけるならば、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えております。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は講座寄附金より使用される予定であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制

この研究は以下の体制で実施します。
【研究実施場所】
九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科学分野
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学分野
【研究責任者】
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学分野 教授 北園 孝成
【研究分担者】
九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター 准教授 中野 敏昭
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学分野  教授 中村 雅史
九州大学病院 胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科 助教 岡部 安博
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 土本 晃裕
九州大学病院 腎疾患治療部      助教 松隈 祐太
九州大学病院  腎疾患治療部      医員 植木 研次
九州大学大学院医学系学府 病態機能内科学  大学院生 安宅 映里

連絡先

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者: 九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター 准教授 中野 敏昭
連絡先:〔TEL〕092-642-5843(内線3001)
    〔FAX〕092-642-5271
メールアドレス:nakano.toshiaki.455@m.kyushu-u.ac.jp

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
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