研究内容

基礎研究

オートファジー“輸送機構”の慢性腎臓病における役割

「輸送機構」としてのオートファジー

オートファジーは細胞内の不要なタンパク質を分解する機構です.
ノックアウトマウスの解析から腎臓でのオートファジーの重要性が報告されています.



オートファジーは不要なタンパク質や不良な細胞内小器官の分解をすることで,細胞質内の清浄化をし,活性酸素ストレスを抑制するのが主な機能と考えられてきました.
私たちはこの「分解機構」に加え,オートファゴゾームという特殊な小胞膜の特性を利用した,細胞内の「輸送機構」としての役割に注目しています1), 2).

腎臓はろ過,再吸収,分泌など物質の移動が盛んです.
この細胞内の「輸送機構」が腎臓病の病態に大きく関与しているのではないかと考えています.

参考文献
1) Torisu T, Torisu K et al (Equally contributed),
   Autophagy regulates endothelial cell processing, maturation and secretion of von Willebrand factor.
   Nature Medicine, 2013, 19, 1281-1287
2) Torisu K, Singh KK, Torisu T, (Equally contributed),
    Intact endothelial autophagy is required to maintain vascular lipid homeostasis.
    Aging Cell. 2016, 15(1), 187-191.

オートファジーの「輸送機構」で運ばれるもの

普通のタンパク質ではない,巨大なタンパク質,結晶化物質などがオートファジーを利用して輸送されているのではないかと仮説を立てて研究を進めています.
 
1)ポドサイトにおける運動能におけるオートファジーの役割
 ネフローゼ症候群では,ポドサイトが運動異常を起こし脱落をすると考えられています.
この運動異常の原因の一つに,ポドサイトと基底膜間をつなぐ接着分子の発現の異常があります.
私たちは接着分子の代表であるβ1インテグリンに注目し,β1インテグリンのturnoverにオートファジーが関与しているのではないかと考え,培養ポドサイトを用いて研究をしています.
 
2)Calciprotein particleによる血管石灰化でのオートファジーの役割
 慢性腎臓病における血管石灰化の病因は,リン酸カルシウムにFetuin Aなどのタンパク質を含む微粒子,Calciprotein particle (CPP)と言われています.


このCPPが血管平滑筋細胞に取り込まれることで,血管中膜の石灰化が起きます.
私たちはCPPを添加した血管平滑筋細胞ではオートファジーが誘導されることを発見しました.
CPPは取り込まれた後,オートファジーによってどう変化するのか,培養血管平滑筋細胞やノックアウトマウスを使って研究をしています.

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

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