研究内容

臨床研究

我が国における慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease :CKD)患者に関する臨床効果情報の 包括的データベースを利用した縦断研究(J-CKD-DB-Ex)

臨床研究について

九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院では、現在、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease :CKD)の患者さんを対象として、検査結果とに関する「観察研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027年10月31日までです。

研究の目的や意義について

​慢性腎臓病とは、腎臓の働き(糸球体濾過量(GFR:Glomerular Filtration Rate))が健康な人の60%以下に低下する(GFRが60 mL/分/1.73㎡未満)か、あるいはタンパク尿が出るといった異常が3ヶ月以上続いた状態を言います。この病気が進行すると、腎臓の代わりとなる治療(腎代替療法(腎移植、腹膜透析、血液透析など))が必要になることがあります。
さらに、慢性腎臓病の患者さんは、心臓や脳,血管の病気(心臓病や脳卒中など)になりやすいこともわかっています。日本では、成人の10-12%(1000万人以上)が慢性腎臓病に罹患していると考えられ、新たな国民病として注目されています。このため、慢性腎臓病の実態を詳細に調査・解析し、有効な予防法や治療法を開発することが緊急の課題となっています。
慢性腎臓病の腎臓が悪くなる速度は様々で一部の患者さんでは非常に早い速度で低下することがわかっております。しかしなぜそのような個人差があるのかはわかっておりません。そのため腎臓がどの程度悪くなるかを予測することは困難な状況です。
本研究の目的は、2つあります。まず、過去の患者さんの情報を使って将来的に腎臓病に関連した様々な研究を行うことができるように、患者さんの電子カルテ情報を自動抽出することでデータを集め、慢性腎臓病のデータベース(J-CKD-DB-Ex)を構築することです。また、本研究でもデータベースに蓄積された情報を使って、どのような診療行為(処方など)が腎臓の機能に影響を与えるかなどを調べます。

研究の対象者について

J-CKD-DB-Exは調査期間に研究参加施設を受診し、登録基準に該当した慢性腎臓病患者の縦断データで構築されるデータベースです。研究初年度(2018年)は、2014年1月1日から2017年12月31日に該当する患者のデータを抽出しました。以降は毎年年末に抽出を行います。例えば2021年には2014年1月1日~2021年12月31日が調査期間となります。
調査対象者 :下記基準を満たす方
1) 調査期間内に当院へ来院された方
2) 18歳以上の方
3) 尿蛋白1+以上 又は/かつ 推算GFR 60 ml/分/1.73 m2未満の方
※推算GFR(ml/分/1.73m2)=194×Cr-1.094×年齢-0.287 (女性は×0.739)
全国で100万例,九州大学病院からは40,000例の登録を目標としています

研究の方法について

本研究では、対象期間中に対象となられた患者さんの電子カルテ情報を自動抽出することでデータを集め解析を行います。このデータを集めたものをデータベースといい、本研究で作成するデータベースをJ-CKD-DB-Exと呼称します(管理責任者: 川崎医科大学腎臓・高血圧内科学 教授 柏原直樹)。作成されたJ-CKD-DB-Exを後ろ向きに統計解析などを行い日本の腎臓病の全体像の把握とリスク層別化などを行います。
収集する項目は,既に外来受診の際にカルテに記載された内容のみで,本研究のために新たな検査や受診が追加されることはありません。具体的な項目は以下の通りです。
1) 匿名化インデックス,病院コード(事務局にて発行),生年月,検査実施日時,性別,受診科,症例コード,治療開始日,患者区分,転帰区分,入院日時,退院日時,血液透析症例,腹膜透析症例,腎移植症例,腎生検,J-RBR,例外(その他),透析開始日,転帰日,外来受診日
2) 血液・尿データ: 当該期間に取得されている検査値(JLAC10コード,検査値,単位)と日付を繰り返し記録する.
血清クレアチニン,尿定性(尿蛋白,尿潜血),尿定量(尿蛋白/クレアチニン比,1日尿蛋白量,尿蛋白,尿アルブミン/クレアチニン比,1日尿アルブミン量,尿クレアチニン,尿ナトリウム,尿・尿素窒素,尿量,血清総蛋白,血清アルブミン,尿酸,尿素窒素,血清ナトリウム,血清カリウム,血清クロール,血清マグネシウム,総コレステロール,HDLコレステロール,LDLコレステロール,中性脂肪,ヘモグロビン,HbA1c,グリコアルブミン,シスタチンC,血清カルシウム,血清リン,副甲状腺ホルモン,血清鉄,総鉄結合能(TIBC),トランスフェリン飽和度,フェリチン,重炭酸イオン濃度,脳性ナトリウム利尿ペプチド,C反応性蛋白,白血球数,赤血球数,血小板数,AST,ALT,血糖, γGTP, クレアチンキナーゼ, 1,5-アンヒドログルシトーAG15, 抗GAD抗体, IA-2抗体, 亜鉛トランスポーター8抗体ZINC8, 血中Cペプチド, 血中インスリン, 血中インスリン抗体, HCV抗体, HBs抗原, CEA, CA19-9, TSH, FT4, FT3, 尿糖定性, 尿ケトン体定性, 尿中Cペプチド,NT-proBNP,抗核抗体,抗好中球細胞質ミエロペル オキシダーゼ抗体,抗好中球細胞質プロテイナーゼ 3抗体,抗糸球体基底膜抗体,血清補体価(CH50),総ビリルビン(T-Bil) ,血中インスリン抗体(濃度) , LDH,ALP,尿カリウム(随時尿),尿カリウム(蓄尿),尿アルブミン(濃度) ,尿クレアチニン(一日量),尿中Cペプチド(濃度) ,尿中Cペプチド(クレアチニン補正)
3) 内服薬: 処方日,薬品名(コード),投与量,投与経路,投与期間
4) 注射薬: 処方日,薬剤名,投与量,投与経路
5) 外用薬: 処方日,薬剤名,投与量,投与経路
6) 病名

個人情報の管理や開示について

電子カルテの情報を抽出する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を割り当て、個人を特定できるデータは削除し匿名化を行ったうえでデータベースに格納されます。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表は九州大学病院医療情報部内のパソコンの本事業用の開発されたアプリケーション内に保存されます。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
研究対象者の電子カルテの情報を川崎医科大学腎臓・高血圧内科学教室が管理するデータセンターへ送付する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 教授 北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
 この研究に使用する情報は、二次利用の際、共同研究機関(参加施設リスト)等の学術研究機関に提供させていただくことがあります。提供の際、あなたを直ちに特定できる情報は削除し提供させていただきます。

試料や情報の保管などについて

この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 教授 北園孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
また、この研究で得られた研究対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えており、この研究で作成した成果産物であるデータベース(J-CKD-DB-Ex)は川崎医科大学腎臓・高血圧内科学J-CKD-DB事務局内のパスワードで制御されたコンピューターに永久に保存します。また、この研究に使用した情報は、研究の中止または論文等の発表から5年間、J-CKD-DB事務局内で保存させていただきます。
J-CKD-DB-Exを使用し、二次利用として新たな研究を行う可能性があります。その際は、別途二次利用者(研究者)が倫理委員会にて承認を得ます。また、国内では多くの臨床データベース、レジストリーの構築が進められており、将来的にはこれらと統合利用も考えています。しかし、疾患領域を越えたデータベースの相互利用、連結については、技術的および倫理的にどのように行うか議論する必要があり、これらが成熟された後にデータベース同士の連結を二次利用として行いたいと思います。
以上のように二次利用に関しては倫理委員会にて承認を得ますが、その研究内容によりデータの共有を他施設と行う可能性があります。また他の研究にデータベースを使用する場合は、その内容をJ-CKD-DB事務局ホームページ(http://j-ckd-db.sakura.ne.jp/)に公開いたします。研究成果は論文や学会等で発表いたします。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は日本医療研究開発機構より支給されており、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

研究の同意について

本研究は過去に受診したカルテ情報を使用するため、この研究へ参加していただけるかどうかについての患者さんのご意思について確認することが難しく、ホームページ上でこの研究を掲示させていただき、研究に参加することを拒否されるとのご連絡を患者さんご自身から事務所に頂戴しない限り、この研究に参加することに同意をいただいたと判断させていただきます。ホームページでこの研究のことをご覧になって、この研究に参加することにご同意いただけない場合には、事務局までご連絡ください。ご連絡をいただいた患者さんはこの研究から除外させていただきます。データベースへの登録除外を希望される方は、初回は2018年12月31日、以降は毎年年度末の3月31日までに申し出ていただければデータを破棄しますが、それ以降は個人を識別することができないため登録除外することができません。最終年度は11月30日に抽出を行い、上記申し出は12月15日までとします。
この研究への参加および不参加はあなたの自由な意思で決めてください。この研究への参加に同意されなくても、あなたの今後の診断や治療に不利益になることは全くありません。
 また、いったん同意した場合でも、あなたが不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができます。同意を撤回されたい方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。その場合は、研究用に取得した情報もそれ以降はこの研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時点で、すでに研究結果が論文などで公表されていた場合には、完全に廃棄できないことがあります。

研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。
研究実施場所 九州大学病院 腎疾患治療部
九州大学大学院 医学研究院 病態機能内科学分野
九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター
研究責任者 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学  教授  北園孝成
研究分担者 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター 教授 中島直樹
九州大学大学院医学研究院 附属総合コホートセンター 准教授 中野敏昭
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 田中茂
九州大学病院 腎疾患治療部 医員 嶋本 聖
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 末永達也
 
その他の共同研究機関等
機関名 / 研究責任者の職・氏名
役割:研究の統括
川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 教授 柏原直樹
役割:情報の収集
東京大学 腎臓内科学 教授 南学正臣
新潟大学 腎・膠原病内科 教授 成田一衛
金沢大学 腎病態統御学・腎臓内科学 教授 和田隆志
京都大学 腎臓内科学 教授 柳田素子
筑波大学 腎臓内科学 教授 山縣邦弘
岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授 和田淳
旭川医科大学 医学部 医学科 臨床医学講座 内科学講座(循環・呼吸・神経病態内科学分野) 准教授 中川直樹
大阪大学 腎臓内科学 教授 猪阪善隆
高知大学 内分泌代謝・腎臓内科学 教授 寺田典生
名古屋大学 腎臓内科学 教授 丸山彰一
横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学 教授 田村功一
埼玉医科大学 腎臓内科学 教授 岡田浩一
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 横尾隆
奈良県立医科大学 腎臓内科学 教授 鶴屋和彦
順天堂大学 腎臓内科学 教授 鈴木祐介
滋賀医科大学 NCD疫学研究センター 最先端疫学部門 教授 矢野裕一朗
川崎医療福祉大学 臨床検査学科/医療情報学科 教授 片岡浩巳
大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学・腎臓病態内科学 教授 繪本正憲
和歌山県立医科大学 腎臓内科学講座 教授 荒木信一

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。
 
事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学病院 腎疾患治療部 医員 嶋本 聖
連絡先:〔TEL〕092-642-5843
    〔FAX〕092-642-5846
メールアドレス:shimamoto.sho.817@m.kyushu-u.ac.jp

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
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