研究内容

臨床研究

糖尿病性腎臓病及び慢性腎臓病患者の包括的腎臓病バイオバンクの強化と利活用

観察研究について

九州大学病院では、病気に関係する遺伝子や薬の効き目に関係する遺伝子を見つけ出したり、遺伝子技術を取り入れた病気の診断のための技術開発を行ったりしています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科では、現在慢性腎臓病の患者さんを対象として、慢性腎臓病に関する「観察研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2024年3月31日までです。

研究の目的と意義

多くの病気は遺伝子と、生活の仕方などの環境要因の両方の影響から起こると言われています。例えば、病気になりやすい遺伝子を持つ方がさらに食事や運動に気をつけなければ、より病気にかかりやすくなります。慢性腎臓病はこのケースにあたり、このような病気を「多因子疾患」と呼びます。多因子疾患のおこるメカニズムは複雑で、現在、世界中で研究が行われています。病気に関係する遺伝子とその影響を調べて、病気の進展との関連を明らかにし、遺伝子を持つ方へ病気を防ぐための情報をお伝えするのが、多因子疾患の研究の目標とされています。また、多因子研究は、遺伝子の他に生活習慣及び臨床経過を統合的に調べる必要があります。生活習慣及び臨床経過は、遺伝子ではなく血液、尿にその情報が反映されるため、血液、尿を調べることが有用です。
 この研究は、慢性腎臓病の患者さんの遺伝子(ゲノムDNA)・血液・尿・臨床情報を保管することで、新しい検査法、治療法、予防法などの医学研究・開発に活用し、病気の原因を解明し、腎臓病の進行と関わる因子を調査することにより、未来の医療に役立ちます。

研究の対象

九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科に慢性腎臓病の診断で外来通院あるいは入院されている患者さんで、通常診療の際に採血を必要とする方、計150名の患者さんを対象とさせていただく予定です。多施設共同研究全体では計7000名の患者さんを対象とさせていただく予定です。
貧血等により、採血をすることで健康状態が悪化すると考えられる方は、この研究にご参加いただくことはできません。
本研究は、すでに開始されている下記課題名の研究に参加されている患者さんを対象としており、同研究で得られたゲノムDNA検体を利用します。
許可番号:815-03
課題名:慢性腎臓病進行因子としてのゲノム・臨床情報データベース統合解析 (多施設共同研究)
許可期間:2022年3月11日~2024年3月31日
本研究に使用する試料・情報の取得期間:~2024年3月31日

研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法

この研究への参加に同意いただきましたら、カルテより以下の情報を取得します。また、通常診療での採血に追加して、研究用の血液を10ml余分に採血させていただきます。また通常診療の尿検査に追加して、研究の尿検査を10ml採取させていただきます。血液検体及び尿検体は遠心分離という方法を用いて処理を行い、血漿および尿上清を採取します。また、すでに承認されております研究(許可番号:815-03、課題名:慢性腎臓病進行因子としてのゲノム・臨床情報データベース統合解析 (多施設共同研究))で採取した、既存のゲノムDNA検体の一部を利用します。
 
 〔取得する情報〕
 生年月、性別、既往歴(糖尿病、脳卒中、虚血性心疾患、心不全、末梢動脈疾患、悪性腫瘍)、家族歴(末期腎不全の家族歴)、生活習慣(喫煙、飲酒)、内服薬・注射薬(降圧薬、利尿薬、抗糖尿病薬、スタチン、ESA)身長、体重、血圧、脈拍
 血液検査結果(血清クレアチニン、血清総蛋白、血清アルブミン、尿酸、尿素窒素、血清ナトリウム、血清カリウム、血清クロール、血清マグネシウム、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、HbA1c、グリコアルブミン、シスタチンC、血清カルシウム、血清リン、Intact PTH、Whole PTH、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、トランスフェリン飽和度(TSAT)、フェリチン、重炭酸イオン濃度、BNP、CRP、WBC、RBC、Hb、Ht、PLT、AST、ALT、抗核抗体、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体、抗好中球細胞質プロテイナーゼ3抗体、抗糸球体基底膜抗体、血清補体価)
 尿検査結果(尿蛋白(定性)、尿潜血、尿蛋白/クレアチニン比、尿蛋白(1日量)、尿蛋白(随時尿)、尿アルブミン/クレアチニン比、尿アルブミン(1日量)、尿クレアチニン(随時尿)、尿クレアチニン(蓄尿)、尿ナトリウム(随時尿)、尿ナトリウム(蓄尿)、尿尿素窒素(随時尿)、尿尿素窒素(蓄尿)、尿量)
 
・これら情報は同意が得られた場合にのみ取得します。また、検査データ、処方データなどは電子カルテの中から取得します。
・試料、診療情報、個人情報等を九州大学病院メディカル・インフォメーションセンターに持ち込み、匿名化作業を依頼します。
・血漿・尿・ゲノムDNA検体は、東北メディカル・メガバンク(東北大学の一施設)にて臨床情報が参照できる形で保管をさせていただきます(バイオバンクとして保管します)が、災害等での貴重な検体の逸失を防ぐため、施設の整備状況に応じ、複数施設で保管する可能性があります。
・今回の研究では、情報・検体を集めさせていただき、それを必要とする研究者に適切に使用していただくことを考えています。医学研究・開発のために研究者(大学または企業)がバイオバンク検体・情報を使用したい場合には、日本腎臓学会で申請を受け付け、東京大学医学部倫理委員会に諮ります。検体や情報が提供される場合には、どなたの検体であるかわからない形で提供されます。また、その検体の遺伝子情報や臨床情報のうち研究の目的に応じて必要な部分のみが提供されます。なお、提供は無償あるいは有償で行われ、有償の場合には対価は頂いた血液・尿由来の検体を維持し保管する目的でのみ用いられます。
・現段階で予定されている研究内容としては、血漿・尿の代謝物を総合的に解析するほか、遺伝子の型の解析、遺伝子全体(全ゲノム)の解析を検討させていただきます。
・また、本研究では診療録からこれまでの検査結果、処方内容などを抽出し、血漿・尿・遺伝子の特徴と組み合わせた解析を行います。複数の施設から,個人情報を除いた形で診療録の内容と血漿・尿・遺伝子を連結したものを、東北大学あるいは他のバイオバンク施設に集約し保管するとともに解析を行います。血漿・尿・遺伝子の解析は、現段階では東北大学で行うことを考えていますが、他研究者に検体が提供された場合、東北大学以外で解析が行われます。
・また、バイオバンク・ジャパンなどの日本あるいは東アジア地域のバイオバンクやコホートとの統合解析も実施する予定です。この場合、個々人のデータは提供されず、個人情報は保護されます。

個人情報の管理について

研究対象者の血液や尿、ゲノム検体、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学において同分野教授 北園 孝成の責任の下、厳重な管理を行います。
なお、本研究において取得した遺伝情報は、あなたの健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性が十分ではないため、開示に応じるとあなたやあなたのご家族に精神的負担を与えたり、誤解を招く恐れがあります。そのため、遺伝情報の開示には応じられません。

研究対象者の血液や尿、ゲノム検体、カルテの情報を東北メディカル・メガバンク(東北大学の一施設)へ郵送する際には、九州大学にて上記の処理をした後に行いますので、研究対象者を特定できる情報が外部に送られることはありません。
また、ゲノム情報の統計量を他研究の解析のために提供する場合(メタGWASという解析手法へ参加する場合)にも、個々人のデータの提供は行いませんので、あなたの個人情報が他研究に渡ることはありません。

試料や情報の保管等について

〔試料について〕
この研究において得られたあなたの血液・尿・ゲノムDNA検体は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学において同分野教授 北園 孝成の責任の下、5年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。また東北メディカル・メガバンクにおいては、同機構 教授 小柴 生造の責任の下、管理を行いますが、本研究の主な目的として血液・尿・ゲノムDNA検体のバンキングでありますことから、長期的に保管します。

〔情報について〕
この研究において得られたあなたのカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学において同分野教授 北園 孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。また東北メディカル・メガバンクにおいては、同機構 教授 小柴 生造の責任の下、管理を行いますが、本研究の主な目的として情報のバンキングでありますことから、長期的に保管します。
 
また、この研究で得られたあなたの血液や測定結果、カルテの情報等は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、あなたの同意がいただけるならば、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えております。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
  一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のゲノム医療実現推進プラットフォーム事業でまかなわれますため、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究機関

この研究は以下の体制で実施します。
【研究実施場所】
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学分野
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科
【研究責任者】 医学研究院総合コホートセンター 准教授 中野敏昭
【研究分担者】
九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学講座・准教授・鳥巣 久美子
九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学講座・学術研究院・土本 晃裕
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科・助教・田中 茂
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科・助教・山田 俊輔
九州大学病院 腎疾患治療部・助教・松隈 祐太
九州大学病院 腎疾患治療部・臨床助教・恒吉 章治
九州大学病院 腎疾患治療部・医員・植木 研次
九州大学病院 腎疾患治療部・医員・嶋本 聖
九州大学病院 腎疾患治療部・医員・古原 千明
九州大学病院 腎疾患治療部・医員・岩本 早紀
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・関 麻衣
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・相原 成志
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・内田 裕士
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・岸本 啓志
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・北村 博雅
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・松枝 修明
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・平島 佑太郎
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・安宅 映里
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・末永 達也
大学院医学系学府・病態機能内科学・大学院生・岩本 昂樹

九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科・テクニカルスタッフ・田中 真由美

【共同研究機関等】
① 川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 主任教授 柏原 直樹
  役割:研究実施および統括、データ解析、論文作成を担当する
② 東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 教授 小柴 生造
  役割:バイオバンク検体管理、メタボロミクス、一部のゲノム解析を担当する

業務委託先:(株)東芝
所在地:東京都港区芝浦1-1-1

連絡先

研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。また、この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
その他、この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
【相談窓口】
担当者:九州大学大学院医学研究院総合コホートセンター 准教授  中野 敏昭
連絡先:〔TEL〕092-642-5256(内線5256)
    〔FAX〕092-642-5271
メールアドレス:nakano.toshiaki.455@m.kyushu-u.ac.jp

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
  • 九州大学
  • 九州大学病院
  • 大学院医学研究院、大学院医学研究府、医学部