研究内容

臨床研究

質量分析法を用いた慢性糸球体腎炎の病態解明

はじめに

<観察研究について>
九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。患者さんの生活習慣や検査結果、疾病への治療の効果などの情報を集め、これを詳しく調べて医療の改善につながる新たな知見を発見する研究を「観察研究」といいます。その一つとして、九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科、消化管内科および検査部、腎移植外科では、現在慢性腎臓病の患者さんを対象として、慢性糸球体腎炎の病態解明に関する「観察研究」を行っています。
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2027年3月31日までです。

<研究と目的と意義>
慢性糸球体腎炎という病気は、慢性腎臓病の原因の一つで、慢性の炎症が腎臓に起きているため、徐々に腎機能が低下する病気です。原因は免疫の異常、生活習慣病との関連、遺伝的な因子など、複数の原因が言われており、主な検査所見としては、蛋白尿、血尿などの検尿異常、もしくは腎機能の低下を示す、血清クレアチニンの上昇が現れます。慢性腎臓病はかなり進行するまで、自覚症状はほとんどありません。
慢性腎臓病の治療法としては、主に降圧薬、減塩、一部の腎炎にはステロイドなどの免疫抑制剤を用いるのが一般的です。この方法で多くの患者さんの病状が軽減されますが、腎機能を正常まで回復させたり、腎臓病の進行を止めることは難しく、より効果のある治療法や予後を予測する因子の開発が求められています。
 
そこで、今回腎・高血圧・脳血管内科・消化器内科および検査部、腎移植外科では、慢性糸球体腎炎の病態や、発症、進展、予後の予測を可能にする新規バイオマーカーを解明することを目的として、本研究を計画しました。研究対象としては、血液と尿、また腎生検組織を受けられた方は腎生検組織を、治療のため血漿交換を受けられる方は廃棄する血漿を解析します。本研究を行うことで、病因や新規バイオマーカーを同定し、慢性腎臓病の患者さん一人一人に合った治療法を確立できると考えています。

研究の対象者について

慢性腎臓病群の対象者
① 既存の試料・情報を収集する対象者
(1)2001年1月1日〜2023年2月13日までに九州大学病院及びその関連施設(※)で腎生検検査を受け、九州大学病院腎臓内科で腎生検組織診断を行った方
※ 関連施設:浜の町病院、九州中央病院、福岡市民病院、白十字病院、小倉記念病院、日本海員掖済会門司病院、宗像医師会病院、唐津赤十字病院
(2)2001年1月1日〜2023年2月13日までに九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科、腎移植外科に慢性腎臓病で通院もしくは入院されている方で、採血、採尿を行った方
② 新たに試料・情報を収集する対象者
(1) 2023年2月13日〜2027年3月31日までに九州大学病院及びその関連施設(※)で腎生検検査を受け、九州大学病院腎臓内科で腎生検組織診断を行う方
※ 関連施設:浜の町病院、九州中央病院、福岡市民病院、白十字病院、小倉記念病院、日本海員掖済会門司病院、宗像医師会病院、唐津赤十字病院
(2) 2023年2月13日〜2027年3月31日までに九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科、腎移植外科に慢性腎臓病で通院もしくは入院されている方で、採血、採尿を行う方
(3) 2023年2月13日〜2027年3月31日までに腎・高血圧・脳血管内科、腎移植外科に通院中もしくは入院中の患者、また腎疾患治療部にて透析中の患者のうち、治療のため血漿交換を行う方


 健常対照群の対象者
① 既存の試料・情報を収集する対象者
(1)2001年1月1日〜2023年2月13日までに九州大学病院で腎生検検査を受け、九州大学病院腎臓内科で腎生検組織診断を行った方のうち、慢性腎臓病の所見がなかった方(主な対象としては、腎臓移植後0時間目生検の結果、慢性腎臓病の所見がなかった方)
(2)2001年1月1日〜2023年2月13日までに九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科、消化管内科および腎移植外科に通院もしくは入院されている方で、慢性腎臓病の所見がなく(検尿異常がない かつ 糸球体濾過値60 mL/min/1.73 m2未満の腎機能低下がない方)、採血、採尿を行った方
② 新たに試料・情報を収集する対象者
(1) 2023年2月13日〜2027年3月31日までに九州大学病院で腎生検検査を受け、九州大学病院腎臓内科で腎生検組織診断を行う方のうち、慢性腎臓病の所見がない方(主な対象としては、腎臓移植後0時間目生検の結果、慢性腎臓病の所見がない方)
(2) 2023年2月13日〜2027年3月31日までに九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科、消化管内科および腎移植外科に通院もしくは入院されている方で、慢性腎臓病の所見がなく(検尿異常がない かつ 糸球体濾過値60 mL/min/1.73 m2未満の腎機能低下がない方)、採血、採尿を行う方
上記計470名を対象とさせていただく予定です。

研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

この研究への参加に同意いただきましたら、カルテより以下の情報を取得します。また、通常診療での採血約 10 mLに追加して、研究用の血液を 14 mL余分に採血、また通常診療での採尿に追加して100 mLの尿を採尿させていただきます。
 〔取得する情報〕
① 臨床情報(年齢、性別、既往歴、家族歴、その他)
② 身体所見(身長、体重、診察時の異常所見)
③ 臨床検査データ(血液、尿所見、心電図、レントゲン、腹部エコー、CT、MRIの画像所見)
④ 腎生検の所見(光学顕微鏡、電子顕微鏡、免疫染色)
⑤ 治療(投与薬剤、手術)
⑥ 治療反応性・有害事象・予後

臨床検査医学講座であなたの尿と血液、(腎生検を受けられた方は)腎生検組織を用いて、(血漿交換を受けられた方は)廃液血漿を用いて詳しい解析を行う予定です。血液、尿、腎生検を受けられた方は診断に用いた残りの腎生検組織を用いて、また血漿交換を受けられる方は廃棄する血漿を用いて、タンパク質や代謝物を網羅的に測定したり、ミトコンドリア機能解析などを行います。測定結果と取得した情報の関係性を分析し、新規因子の慢性腎臓病に対する影響を明らかにします。
 また、臨床経過の追跡調査のため、電子カルテから1年に1回かそれ以上の頻度で下記データの収集を行い、経年的に更新させていただきます。
1)身体所見:体重、身長、血圧、尿量、診察時の異常所見
2)検査データ:血液、尿所見、レントゲン、腹部エコー、CT, MRIの画像所見
3)治療:投与薬剤、手術
4)治療反応性、合併症、予後:腎機能の推移、慢性腎臓病に伴う心血管合併症、末期腎不全への到達の有無など。
 また、もし電子カルテで上記の情報が欠損している場合は、電話や郵便などを用いて転院の有無や末期腎不全到達の有無など、また可能であれば血液、尿所見について伺うこともありますが、その場合には研究概要をご説明した上で新たに文書による同意を得る予定です。

個人情報の取扱いについて

研究対象者の血液や尿、(腎生検を受けられた方は)病理組織、(血漿交換を受けられた方は)廃液血漿、測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学及び九州大学病院検査部内のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学・教授・北園孝成の下、厳重な管理を行います。
ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。
 

試料や情報の保管などについて

〔試料について〕
この研究において得られた研究対象者の血液や尿、病理組織等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院医学研究院病態機能内科学、九州大学病院検査部において同分野教授・北園孝成の責任の下、5年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。

〔情報について〕
この研究において得られた研究対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学九大学院医学研究院病態機能内科学、九州大学病院検査部において同分野教授・北園孝成の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 
また、この研究で得られた研究対象者の試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究に関する必要な経費は講座寄付金であり、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。
利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学病院ARO次世代医療センター 電話:092-642-5082)

研究に関する情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、この研究では、学会等への発表や論文の投稿により、研究成果の公表を行う予定です。

研究体制

この研究は以下の体制で実施します。

<研究実施場所>
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学
九州大学病院 検査部

<研究責任者>
九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター准教授 中野敏昭

<研究分担者>
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 教授 北園孝成
九州大学大学院医学研究院 臨床腫瘍外科 教授 中村雅史
九州大学病院 検査部 助教 瀬戸山 大樹
九州大学大学院医学研究院 臨床腫瘍外科 助教 岡部安博
九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学准教授 鳥巣久美子
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 田中 茂
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 山田 俊輔
九州大学病院 腎疾患治療部 臨床助教 恒吉 章治
九州大学病院 腎疾患治療部 助教 松隈 祐太
九州大学大学病院 腎疾患治療部 医員 植木 研次
九州大学大学院医学系学府 大学院生 山口 佐歩美
九州大学大学院医学系学府 大学院生 岩本 昂樹

<共同研究機関等(研究機関/研究責任者の職・氏名)>
 ※役割:試料・情報の収集
九州中央病院  / 腎臓内科部長 水政 透
小倉記念病院  / 腎臓内科部長 金井 英俊
宗像医師会病院 / 腎臓内科部長 松尾 大
白十字病院   / 腎臓内科部長 平野 直史
浜の町病院   / 腎臓内科部長 吉田 鉄彦
日本海員掖済会門司病院/腎臓内科部長 有村 美英
福岡市民病院  / 腎臓内科部長 池田 裕史
唐津赤十字病院 / 第二内科部長 長嶋 昭憲


10.相談窓口について 
この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター准教授 中野敏昭
連絡先:〔TEL〕092-642-5843(内線5843)
    〔FAX〕092-642-5271
メールアドレス:nakano.toshiaki.455@m.kyushu-u.ac.jp

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター准教授 中野敏昭
連絡先:〔TEL〕092-642-5843(内線5843)
    〔FAX〕092-642-5271
メールアドレス:nakano.toshiaki.455@m.kyushu-u.ac.jp

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
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