研究内容

臨床研究

福岡腹膜透析データベース研究

臨床研究について

 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病態機能内科学 腎臓研究室では、現在腹膜透析療法の患者さんを対象として、透析がどれくらい必要か,生命予後や腹膜透析の継続年数に影響する要因は何かといった医学的根拠(エビデンスといいます)を作り出すことに関する「臨床研究」を行っています。
 
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、2023年3月31日までです。

研究の目的や意義について

日本透析医学会の統計調査によれば,2010年末には日本国内の透析人口はおよそ30万人に達しています.そのうち腹膜透析を行っている方は約1万人程度です.残存腎機能を維持できることや時間的な拘束が少ないこと,短時間での除水による心臓への負担が少ないことなどの腹膜透析の利点が知られていながら,腹膜透析の人口が少ない理由のひとつとして,生命予後に関する医学的な根拠(エビデンス)が少ないということや,被嚢性腹膜硬化症の問題があげられます.これまで,生命予後を長くするためにどのくらいの透析量(バッグ交換の回数)が必要かといった大きな臨床研究がなされ,それらが今日透析の処方を決めるときの手がかりとなっています.しかし,これらの臨床研究は海外で行われたものばかりで体型や社会的背景の異なる日本人に,そのまま当てはめてよいかという議論もなされています.日本でも臨床研究が行われていますが,ひとつの病院に通院する腹膜透析の患者さんは少なく,明らかな結果を導くには足りません.そこで,九州大学の関連病院が協力してデータベースを作成したいと考えています.このグループではおよそ500名以上の腹膜透析患者さんが治療を受けています.このデータベースを用いて,透析がどれくらい必要か,生命予後や腹膜透析の継続年数に影響する要因は何かといった医学的根拠(エビデンスといいます)を作り出すことがこの研究の目的です.またこの研究を継続することによって,皆さんに提供できる医療の質を向上させることも,研究の目的としています.

研究の対象者について

この研究は,九州大学病院および九州大学大学院 病態機能内科学 腎臓研究室の関連施設において腹膜透析療法を受けている全ての患者さん(15歳以上)を対象とします.関連施設全体での目標登録症例数は1000例,九州大学病院内では200例です.透析方法の別(CAPD,APD,HD併用療法)は問いません.他に,ご本人から同意の撤回を申し出られた場合も,終了(中止)となります.
 本研究では2012年6月20日から承認日までの間に腹膜透析療法を受けていた全ての患者さん(15歳以上)についても,貴重なデータが残っていますので,登録の対象となっています.
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください。

研究の方法について

この研究は,参加していただく患者さんのデータベースをインターネット上に作成し,そこからいろいろな医学的根拠を探索していくことを目的としています.そこで,通常診療で得られる検査結果を1年に 1度登録していただき,経過を追跡させていただきます.登録の作業は,あなたの病院の担当医師が行いますので,あなた自身に負担はありません.
 
 〔取得する情報〕
(1)               患者登録番号*(施設で決定し入力)
(2)               生年月
(3)               年齢(自動計算)
(4)               性別
(5)               登録時の治療形態(導入・維持年数)
(6)               導入年月日(腹膜透析開始日)
(7)               導入時併存疾患(カールソン併存疾患スコア)
(8)               導入時腹膜平衡試験(Peritoneal equilibration test: 標準法 / fast PET)
(9)               原疾患(腎生検の有無,病理組織診断名)登録時既往症
(10)             導入前提供情報(腹膜透析,血液透析,腎移植)
(11)              Late referral (導入前3ヶ月以内の紹介)
(12)             身体所見(体重,身長,血圧,尿量,除水量,腹膜平衡試験)
(13)             腹膜炎・腹膜炎菌種同定
(14)             出口部感染・出口部感染菌種同定
(15)             透析処方:透析液量,高張(2.5%)液,低カルシウム透析液 
                                  イコデキストリン,APD(サイクラー)使用の有無 
(16)             血液透析併用の有無
(17)             尿素Kt/V: 残存腎機能(24時間蓄尿検査),24時間排液検査,尿量
(18)             中皮細胞診(有無,平均面積 cm2)
(19)             心胸比(CTR)
(20)             血液生化学データ
        ヘモグロビン,アルブミン,C反応性蛋白,クレアチニン,尿素窒素,
        尿酸,ナトリウム,カリウム,カルシウム(アルブミン補正なし),
        リン,HbA1c,グリコアルブミン,総コレステロール,中性脂肪,
        LDLコレステロール,HDLコレステロール,hANP,
        BNP(Nt-proBNP),血清鉄,TIBC,フェリチン,
        β2ミクログロブリン,PTH(intact/whole)
(21)             貧血治療状況: ESA製剤投与の有無,種類,投与量,鉄剤投与の有無
(22)             骨代謝系情報
       活性型ビタミンD製剤,カルシウム含有リン吸着薬,
       非カルシウム含有リン吸着薬,塩酸セベラマー,炭酸ランタン,
       シナカルセト、エストロゲン受容体調整薬,ビタミンK,ビキサロマー,
       RANKL阻害薬,生体インピーダンス情報、骨塩定量
       骨折の既往,副甲状腺摘出術,副甲状腺内エタノール注入法
(23)             その他の投薬情報
                  アンギオテンシン変換酵素阻害薬,アンギオテンシンII受容体拮抗薬,
                    カルシウム拮抗剤,直接的レニン阻害薬,β遮断薬,
                    HMG-CoA還元酵素阻害薬,経口血糖下降薬,インスリン注射,利尿薬
(24)             栄養指導状況
(25)             合併症の新規発症状況:
       coronary artery disease (CAD), 心不全,心筋梗塞,脳出血,
       入院を要する脳梗塞,下肢閉塞性動脈硬化症,不整脈(心房細動),
       ヘルニア,横隔膜交通症,被嚢性腹膜硬化症
 (26)           生活に関する情報
                   生活形態(同居者の人数),ADLレベル: Performance status,
       透析手技の自立の程度と介助者,介護度

個人情報の取扱いについて

研究対象者の血液や測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、研究対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学大学院 腎臓研究室のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
九大以外の各施設においては、研究対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、匿名化符号(症例登録番号)と個人識別情報との対応表は,事務局へは提出せず,各参加施設内で研究責任医師が施錠された環境下に厳重に管理します。
研究対象者のデータは、九州大学病院メディカルインフォメーションセンターの臨床研究支援を受けて構築した九州大学病院臨床研究データ管理システムにweb登録され、全ての情報は独自のセキュリティシステムのもと厳重に管理されます.
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、研究対象者が特定できる情報を使用することはありません。
この研究によって取得した情報は、九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成の責任の下、厳重な管理を行います。

試料や情報の保管等について 

〔試料について〕
この研究において得られた研究対象者の血液や病理組織等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院 病態機能内科学腎臓研究室において九州大学病院九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成の責任の下保存します。研究期間延長の可能性,また未知のバイオマーカー測定の可能性を考慮し,保存期限を設けません.
〔情報について〕
この研究において得られたあなたのカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学大学院 病態機能内科学腎臓研究室において九州大学大学院病態機能内科学 教授 北園孝成の責任の下、保存します。研究期間延長の可能性を考慮し,保存期限を設けません.
また、この研究で得られたあなたの試料や情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

研究に関する情報や個人情報の開示について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、ご本人からの開示の求めに応じて、保有する個人情報のうちその本人に関するものについて開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究の実施体制について 

この研究は以下の体制で実施します。

研究実施場所(分野名等)
九州大学大学院包括的腎不全治療学 
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科外来
腹膜透析外来(南棟4階) 
各参加施設の腹膜透析外来診療室 

研究責任者
九州大学大学院態機能内科学  教授     北園孝成

研究分担者
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科  助教  中野敏昭
九州大学病院包括的腎不全治療学     准教授   鳥巣久美子
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科  助教 藤﨑毅一郎
九州大学病院腎疾患治療部  助教 土本晃裕
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 医員  山田俊輔
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 冷牟田浩人
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 辻川浩明
九州大学大学院医系学学府病態機能内科学 大学院生 植木研次
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生  原雅俊
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 荒瀬北斗
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 冨田佳吾
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 岸本啓志
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 内田 裕士
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 中川 兼康
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 医員 北村博雅
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 医員 恒吉章治
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 医員 岡本悠史
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 医員 田中和可子
九州大学病院腎疾患治療部  医員 長谷川祥子
九州大学病院腎疾患治療部  医員 松隈祐太
九州大学病院腎疾患治療部  医員 四枝龍介
九州大学病院救命救急センター  医員 川井康弘

共同研究員
奈良県立医科大学腎臓内科/教授・鶴屋和彦
大阪市立大学大学院医学研究科医療統計学/准教授・吉田寿子

共同研究施設
施設名 / 研究責任者の職名・氏名 役割
飯塚病院/腎臓内科・部長・平川亮
掖済会門司病院/内科部長・有村美英
唐津赤十字病院/第2内科・部長・長島昭憲
JCHO九州病院/腎臓内科・医長・田村恭久
九州中央病院/腎臓内科・部長・水政透
小倉記念病院/副院長・腎臓内科部長・金井英俊
小倉第一病院/院長・中村秀敏
国立病院機構九州医療センター/腎臓内科・科長・中山勝
製鉄記念八幡病院/腎臓内科・部長・柳田太平
聖マリア病院/副院長・腎臓内科部長・東治道
田川市立病院/腎臓内科・医長・大仲正太郎
白十字病院/副院長・腎臓内科部長・平野直史
浜の町病院/腎臓内科・部長・吉田鉄彦
原三信病院/腎臓内科・医長・四枝英樹
福岡赤十字病/腎臓内科・部長・満生浩司
宗像医師会病院/腎センター長・松尾大
福岡市民病院/腎臓内科科長・池田裕史
奈良県立医科大学/腎臓内科・教授・鶴屋和彦

業務委託先 企業名等:SRL
所在地:東京都新宿区西新宿二丁目1番1号

相談窓口について 

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科  助教  中野敏昭
九州大学病院包括的腎不全治療学 准教授 鳥巣久美子
九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科 医員  山田俊輔
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生  辻川浩明
連絡先:〔TEL〕092-642-5843    〔FAX〕092-642-5846
メールアドレス: md102059@kcu.med.kyushu-u.ac.jp (辻川)

進捗状況


 

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
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