研究内容

臨床研究

多施設共同慢性腎臓病データベース研究

ヒトゲノム・遺伝子解析研究について

九州大学病院では、病気に関係する遺伝子や薬の効き目に関係する遺伝子を見つけ出したり、遺伝子技術を取り入れた病気の検診のための技術開発を行ったりしています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」といいます。その一つとして、九州大学大学院病態機能内科学では、関連施設と共同で、慢性腎臓病の病態・予後解明、新規治療法開発を探索する研究を実施しております。ある時点において得られた病状に関する情報がその後の腎臓病の悪化とどのように関連を示すのか(予後調査)、どのような体質を有する方が腎臓病の悪化を来しやすいのか(遺伝子解析)等につき研究しております。
 
今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和8年2月28日までです。

研究の目的と意義について

腎臓は血液を濾過して、体内の老廃物や余分な塩分を濾し取り、尿として体外に排泄する役割を担っています。慢性腎臓病とは、①腎臓の障害(蛋白尿などの検尿異常)、もしくは②GFR(糸球体濾過量:腎臓の老廃物濾過能力のことです)60 mL/min/1.73 m2未満の腎機能低下が3か月以上持続するもの、と定義されています。
慢性腎臓病の原因となる病気(原疾患と呼びます)は数多くあり、原疾患によって治療法が異なります。一般に病気の経過や採血、尿の検査、腎生検などの検査を行い、全ての情報を総合して判断し、原疾患に応じた治療法を決定します。
 この観察研究の目的は、慢性腎臓病の悪化要因や予防法を明らかにすることです。具体的には当研究関連施設を受診された腎臓病患者さんが、どのような病状を伴っておられるか、また将来、不幸にして腎臓病の病状が進んでしまった際に、どのような要因が関与したのかについて調べさせていただきます。さらに、遺伝情報を解析して、腎臓病の悪化にかかわる遺伝子についても調査させていただきます。分かりやすく言うと、遺伝的体質による治療薬への反応性のちがいをみたり、どのような体質の方が腎臓病の病状が悪化しやすいかなど疾患予後との関わりについて調査します。

研究の対象者について

この研究では、九州大学病院及び関連施設で針生検などにより診断が確定した方、あるいは①腎臓の障害(蛋白尿などの検尿異常)、もしくは②GFR(糸球体濾過量:腎臓の老廃物濾過能力のことです)60 mL/min/1.73 m2未満の腎機能低下が3か月以上持続するもの、という慢性腎臓病の定義を満たす方約4500名及び1972年1月1日から2015年3月31日までに当院および関連施設で腎生検の検査を受けられた患者さん約3000名を対象に行います。対照群として久山町における住民健診を基盤とした「生活習慣病の疫学調査」に参加中の一般住民のうち、非慢性腎臓病者約4500名を対象とさせていただく予定です。
研究の対象者となることを希望されない方又は研究対象者のご家族等の代理人の方は、事務局までご連絡ください.
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

研究の方法について

【1】 新規症例登録による前向きコホート研究データベース
この研究にご同意いただける方には、以下の項目についてご協力をお願いしております。
  • 診療情報の一部のご提供・アンケート調査
カルテより、病歴、検査所見、治療内容、経過、予後などを調査させていただきます。同時に、生活習慣に関するアンケート調査へのご協力をお願いしております。研究に先立ち、個人情報の漏洩を防ぐため、あなたの個人情報を抜き取り別に管理します(匿名化といいます。)
  • 血液、尿、便、病理組織サンプルのご提供
通常診療の血液検査に加えて、約20mLの血液(採血管3~4本分)と約10mLの尿を採取させていただき、将来の検査のために冷凍保存します。診療で得られた腎組織サンプルがあれば、こちらも冷凍保存させていただきます。また、一部の方には数グラムの便検体の採取をお願いする場合もあります。提供していただいた血液からDNAという物質を取り出し、遺伝子を調べます。これにより、慢性腎臓病の原因となる遺伝子の型がわかります。この遺伝子の型が他の人とどのように違うかを調べ、さらにあなたの症状との関係を調べます。
  • 予後追跡調査へのご協力
調査にご参加頂きました方の健康状態の変化について、登録施設の研究担当者から毎年ご確認させていただきます。その時点でのカルテや診療録からの追跡調査を行うとともに、ご氏名、ご住所、お電話番号を用いて直接担当者よりご連絡させていただき、病状のご確認を行わせていただくこともあります。調査開始より5年後に、時間的経過を経た病状の変化を確認するために、再度のアンケート調査や血液、尿の保存を予定しております。
 〔取得する情報〕
① 臨床所見(年齢、性別、既往歴、家族歴、その他)
② 身体所見(身長、体重、その他)
③ 臨床検査データ(血液、尿所見、心電図、レントゲンなど画像所見)
④ 病理学的所見(光学顕微鏡、電子顕微鏡、免疫染色)
⑤ 治療(投与薬剤、手術など)
⑥ 治療反応性・有害事象・予後

【2】 既存試料・情報を用いた後ろ向き疫学研究用データベース
1972年1月1日から2021年5月31日までに当院および関連施設で経皮的針生検による組織診断を受けた慢性腎臓病患者さんを被験者として登録し、現在、各施設が管理している過去の症例データの診療録、退院時要約について、各登録施設の個人情報管理者の監督のもと、個人情報管理補助者により、連結可能匿名化した後、病態機能内科学医師およびCRCよりなる調査チームが各施設を訪問して臨床情報を取得し、共通のデータベースとして厳重に管理します。対応表についてもパスワードにより暗号化し、アクセス制限されたデータツールによって厳重に管理します。調査チームは以下の臨床情報、病理組織を収集します。
① 臨床所見(年齢、性別、既往歴、家族歴、その他)
② 身体所見(身長、体重、その他)
③ 臨床検査データ(血液、尿所見、心電図、レントゲンなど画像所見)
④ 病理学的所見(光学顕微鏡、電子顕微鏡、免疫染色)、凍結標本組織
⑤ 治療(投与薬剤、手術など)
⑥ 治療反応性・有害事象・予後

匿名化された試料等を使い、北部九州医療圏の慢性腎臓病患者の実態(腎生検組織所見、血圧、治療薬、合併症など)を明らかにし、診断や治療法の検証を行い、予後要因を解析します。
あなたの血液や病理組織、糞便サンプル、測定結果、カルテの情報を株式会社LSIメディエンスや株式会社テクノスルガ・ラボへを郵送にて送付し、詳しい解析を行う予定です。他機関への試料・情報の送付を希望されない場合は、送付を停止いたしますので、ご連絡ください。

研究に関する情報公開について

この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
また、ご本人等からの求めに応じて、保有する個人情報を開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

利益相反について

九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
  一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
本研究の研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。

利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。

利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092-642-5774)

研究の実施体制について

この研究は以下の体制で実施します。

【研究実施場所(分野名等)】
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学、九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科
【研究責任者】
九州大学大学院医学研究院病態機能内科学・教授・北園 孝成
【研究分担者】
九州大学大学院医学研究院総合コホートセンター准教授 中野敏昭
九州大学大学院医学研究院包括的腎不全治療学 准教授 鳥巣久美子
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 田中茂
九州大学病院 腎疾患治療部 助教 土本晃裕
九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 山田俊輔
九州大学病院 腎疾患治療部 助教 松隈祐太
九州大学大学院医学系学府病態機能内科学 大学院生 北村博雅
【疫学・統計アドバイザー】
九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野・教授     二宮利治
【共同研究施設及び試料・情報の提供のみ行う施設、研究責任者】
掖済会門司病院 内科・部長 有村 美英
唐津赤十字病院 第2内科部長 長嶋 昭憲
九州中央病院 腎臓内科・部長 水政 透
小倉記念病院 腎臓内科・部長 金井 英俊
国立病院機構九州医療センター 腎臓内科・部長 中山 勝
国立病院機構福岡東医療センター 腎臓内科部長 黒木 裕介
製鉄記念八幡病院 腎臓内科・部長 柳田 太平
聖マリア病院 腎臓内科・部長 東 治道
田川市立病院 内科・医長 大仲 正太郎
白十字病院 腎臓内科・部長 平野 直史
浜の町病院 腎臓内科・部長 吉田 鉄彦
原三信病院 腎臓内科・副部長 末廣 貴一
福岡歯科大学 内科・准教授 徳本 正憲
福岡腎臓内科クリニック 院長 平方 秀樹
福岡赤十字病院 腎臓内科・部長 満生 浩司
福岡市民病院 腎臓内科・部長 池田 裕史
宗像医師会病院 腎センター長代行 松尾 大
飯塚病院 腎臓内科・部長 藤﨑 毅一郎
公益社団法人 久山生活習慣病研究所・代表理事 清原 裕

【業務委託先】
①企業名等:LSIメディエンス
所在地:福岡県福岡市東区多の津1-14-1
②企業名等:テクノスルガ・ラボ
所在地:〒424-0065 静岡県静岡市清水区長崎3

相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

事務局
(相談窓口) 担当者:九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科 助教 田中茂
連絡先:〔TEL〕092-642-5843
    〔FAX〕092-642-5846
メールアドレス:tanaka.shigeru.170@m.kyushu-u.ac.jp

九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 腎臓研究室

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 交通アクセス

TEL:092-642-5256 FAX:092-642-5271
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